祈り・2

木登り ドロケイ 鬼ごっこ
ちゃんばら かけっこ 縄跳び スモウ
いくら遊んでも遊び足りない
ずっと一緒に遊べたらいいのに

「あれ?どこ行っちゃったんだろ?」
がさごそがさごそ。
「おかしいな。ここじゃなきゃどこだ?」
がさごそがさごそがさごそがさごそ。
ひとしきり、自分の手が届くいっぱいまでベッドの下に手を伸ばして、ナタクはすごく困った顔を覗かせた。
大して物がない上にいつも侍女が片付けているから綺麗な部屋の中が、無茶苦茶になっている。
全部彼が引っ掻き回したせいだ。
さっきから必死になって探しているのは、彼の友達からの手紙だった。
眠っている間に置いて行ってくれた、自分に当てた手紙。
気を抜いて、目が届かないところに置いておいたら、捨てられてしまう。
(手紙と一緒に貰った花は、捨てられてしまった。後でどれだけ問い質してもはぐらかされてしまった)
だからずっと、帯の下に入れて持ち歩いていたのに。
朝目が覚めたら、枕元にあったはずなのになくなっていて。
ずっと探しているのに見つからず、何だかもう泣きそうだった。
「…………どこだよ」
大切にしてたのに。
本気で悲しくなって、苛立って、涙が出そうになる。
その時。
「ナタクー、遊ぼー! うわ、何この部屋!?」
いきなり部屋に元気な声が響いて、一気に涙が引っ込んでしまった。
驚いているナタクをよそに、ナタクが必死に探している手紙の送り主、孫悟空は散らかった部屋の中をずんずん進んでくる。
「天ちゃんの部屋みたい。何か探してんの?俺手伝おうか?」
ひょこ、とナタクの顔を覗き込む金晴眼に、顔が赤くなる。
まさか、こんなにも必死に探しているのが、お前からの手紙だとは言えない。
「べ、別に何も探してない」
「そ? ……にしてもすごいよな。俺この前天ちゃんの部屋のお片づけ手伝ったけど、ここも片付けるの大変そう……………」
悟空の声が途中で途切れる。
何事か、と覗き込んだ先に、ナタクは自分がさっきから探していた物を見つけた。
だが、それはベッドの上でも棚の下でもなく、ゴミ箱の中に半分埋もれていた。
まるで捨てられたように。
「あ………」
声を上げたナタクが反応を示すより早く、悟空が踵を返す。
「……………帰る」
涙の混じった声。
…………傷ついた声。
「悟空、ちょっと待って!!」
誤解されているのだと分かって、ナタクは悟空の腕を掴む。
悟空は足を止めた。でも振り向いてくれない。
どうしよう。なんと言えばいいのか分からない。でも何か言わなきゃ。
悩んでいると、ぐす、と鼻をすする音が聞こえた。
「違うんだ! 捨てたんじゃなくて……。多分寝てる間に落ちたんだ、ずっと枕元に置いてたから。……俺がさっきから探してたの、あの手紙だったんだ」
必死でまくし立てる。
気付いたら、悟空がこちらを向いていた。
そして気付いたら、自分も泣いていた。
「貰ってからずっと大事にしてたよ。さっき、見つかんなくてすげえ焦った」
伝わったかな、と悟空の顔を見ていると、少しして彼の顔がくしゃりと歪んだ。
「………先に言えよもう」
涙混じりだけど、笑っている。
「……言えるかよ」
ほっとして、何だかくすぐったくて、自分も笑う。
へへへ、と二人顔を見合わせて笑った。涙も拭かずに。
ひとしきり笑って、ゴミ箱から手紙を拾って、いつも通り帯の下に入れて。
振り向くと、悟空はいつもの笑顔で言ってくれた。
「今日は何して遊ぶ?」

木登り ドロケイ 鬼ごっこ
ちゃんばら かけっこ 縄跳び スモウ
いくら遊んでも遊び足りない
ずっと一緒に遊べたらいいのに

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