宛てのない手紙

お空には、ぽっかりと丸い月。
のろのろと格子に膝立ちで近づく。
丸い丸い、冷たいがどこか優しい光。
手を伸ばしても届かないけれど、光だけは頭を撫でてくれる。
見ていると、何か名前が浮かぶ気がした。
でも、口を開けても何も出てこない。
丸い丸い、白くて金色で、冷たくて優しい光。
じっと、見上げて、見上げて、見つめて。

開いた口から、ほんのかすかな溜息。
開いた目から、一筋の水。

ねえ、どうしたら来てくれるの?
誰に宛てているのかわからない言葉。
ねえ、何でここにいないの?
きっと、月を見て浮かびかけた誰かへの言葉。
ねえ、今何してるの?
名前も顔も浮かばないのに、気持ちだけはあふれ出て。
ねえ、いつになったらまた逢えるの?
ただ、宛てのない言葉達が胸を突く。

ねえ、どうしたら来てくれるの?
ねえ、何でここにいないの?
ねえ、今何してるの?
ねえ、いつになったらまた逢えるの?

宛てのない言葉たちが、外に出たいと胸を突き上げる。
そしたら胸がぎゅっと痛くなる。
この言葉が、誰かに届いたら。
この痛みは、消えてしまうのだろうか。

ねえ、「  」もこの月見てるの?

まだ、あて先は空っぽ。


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